法人の節税対策一覧|最強の方法を効果額と優先順位で選ぶ手順
法人の節税対策で最強の方法とは?考え方の全体像
「最強の節税」とは、単に税金が一番減る施策のことではありません。手元のキャッシュを過度に減らさず、将来の解約時に課税が戻ってくる「繰り延べ」と恒久的に税負担が減る「本当の節税」を見分け、自社の利益水準に合った施策を選んだ状態を指します。
判断の軸は3つです。1つ目は効果額(その施策でいくら税金が減るか)、2つ目は優先順位(効果が大きく実行しやすいものから手をつける)、3つ目は資金繰りへの影響(節税のために出ていく現金がどれだけか)です。この記事は、この3軸で施策を整理していきます。
法人税の税率は、資本金1億円以下の普通法人で、年800万円以下の所得部分が15%、800万円超の部分が23.2%という軽減税率が適用されます(適用除外事業者を除く)。利益がいくらの帯にあるかで、節税1円あたりの効果が変わる点をまず押さえてください。
節税を始める前に知っておきたい所要時間・難易度・前提条件
この記事の手順を一通り進めるための目安をまとめます。直近の試算表があるかどうかで所要時間が大きく変わります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所要時間 | 利益水準と効果額の試算で30分〜1時間、施策の絞り込みで1〜2時間 |
| 難易度 | 中(決算書の損益と現預金残高が読めればよい) |
| 必要な道具 | 直近の試算表または決算書、現預金残高、通帳・資金繰り表 |
| 前提条件 | 当期がおおむね黒字(赤字なら繰戻し還付・繰越の検討が中心) |
| 相談先 | 顧問税理士または税理士紹介サービス |
前提として、節税は「利益が出ている会社」で意味を持ちます。赤字の会社は税金がそもそも発生しないため、後述する欠損金の繰越や繰戻し還付の検討が中心になります。
法人税の概要と申告期限をおさえる
法人税は、事業年度の所得に対してかかる税金です。申告と納税の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内と定められています。決算月の2か月後がタイムリミットであり、節税策の多くは「決算日まで」に実行を終えていなければ当期に反映できません。
つまり、節税は「申告期限の直前」ではなく「決算日の前」までに動く必要があります。決算日を過ぎてからできる対策はほとんどありません。この時間軸を最初に意識してください。
節税対策を選ぶ手順【1ステップ=1動作で解説】
ここからは、自社に合う節税策を選ぶ手順を5ステップで示します。1ステップにつき1つの動作だけを行い、各ステップの「ここまでできていれば正しい」を確認しながら進めてください。
ステップ1:直近の利益水準と納税額の見込みを把握する
最初の動作は、直近の試算表を開いて「税引前利益の見込み」を確認することです。年800万円以下なら15%、超える部分は23.2%という税率帯のどこにいるかが分かれば、節税1円あたりの効果も見えます。
ここまでできていれば正しい:当期の税引前利益の見込み額と、それにかかる法人税のおおよその金額を1つの数字で言える状態になっています。
ステップ2:会社の規模・成長ステージを確認する
次の動作は、自社が中小企業向けの優遇措置の対象かを確認することです。資本金1億円以下なら、少額減価償却資産の特例や中小企業投資促進税制など、中小企業限定の制度を使えます。
ここまでできていれば正しい:「資本金がいくらか」「設立から何期目か」「これから投資を増やす段階か安定期か」を答えられる状態です。成長ステージで向く施策が変わります。
ステップ3:効果額の大きい施策から優先順位をつける
動作は、後述の一覧表から自社で使えそうな施策に印をつけ、効果額の大きい順に並べることです。役員報酬の最適化のように毎期効く施策は優先度が高く、単発の前倒し費用は補助的に位置づけます。
ここまでできていれば正しい:使える施策が3〜5個に絞られ、効果額の大きい順に並んでいる状態です。
ステップ4:資金繰りへの影響を試算する
動作は、選んだ施策ごとに「出ていく現金」と「減る税金」を並べて引き算することです。たとえば100万円の保険料を払って実効税率約30%なら、減る税金は約30万円、純粋な現金流出は約70万円です。節税額より流出額が大きい施策は、資金に余裕があるときだけ使います。
ここまでできていれば正しい:各施策について「現金がいくら減り、税金がいくら減るか」を表で比べられる状態です。
ステップ5:実行時期(決算前・期中・設立時)を決める
最後の動作は、施策を実行タイミングで仕分けることです。事前確定届出給与のように事前の届出が必要なものは期首・株主総会後、決算賞与や短期前払費用は決算日まで、法人化や決算月変更は設立・組織の見直し時に検討します。
ここまでできていれば正しい:選んだ施策が「いつまでに何をするか」のスケジュールに落ちている状態です。申告と納税の期限は決算日の翌日から2か月以内なので、実行は必ず決算日前に終えます。
うまくいかないときは?よくあるつまずきと対処
つまずき1:効果額が計算できない。→ 試算表の税引前利益が確定していないことが原因です。まず月次を締めて利益見込みを固めてください。
つまずき2:施策を入れたのに手元資金が苦しくなった。→ 繰り延べ型(保険・リース・共済)に偏っています。出ていく現金が節税額を上回っていないか、ステップ4の表で再確認してください。
つまずき3:決算間際で打てる手がない。→ 決算日を過ぎると当期の対策はほぼ打てません。来期は期首から手順を回し、事前届出が要る施策を期初に仕込みます。法人税の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内である点を踏まえ、逆算で動きます。
法人節税対策一覧【効果額と優先順位で整理】
| 施策 | 効果の型 | 現金流出 | 主な実行時期 |
|---|---|---|---|
| 役員報酬の適正設定 | 恒久寄り | 小(社内移転) | 期首・株主総会後 |
| 決算賞与 | 恒久 | 中 | 決算前 |
| 事前確定届出給与 | 恒久寄り | 中 | 事前届出が必要 |
| 少額減価償却資産の特例 | 繰延〜恒久 | 中 | 期中・決算前 |
| 経営セーフティ共済 | 繰延 | 大 | 期中・決算前 |
| 法人向け保険 | 繰延 | 大 | 期中 |
| オペレーティングリース | 繰延 | 大 | 期中 |
| 賃上げ促進税制・設備投資減税 | 恒久 | 投資に依存 | 期中 |
| 社宅制度 | 恒久 | 小 | 期中 |
| 旅費日当 | 恒久 | 小 | 規程整備後 |
| 未払費用・短期前払費用 | 繰延 | 小 | 決算前 |
| 費用の年払い化 | 繰延 | 中 | 決算前 |
| 不要在庫の処分 | 恒久 | 小 | 決算前 |
| 交際費・社員旅行・健康診断 | 恒久 | 中 | 期中 |
| 自家用車の社用車化 | 恒久 | 小 | 期中 |
| 欠損金の繰越・繰戻し還付 | 恒久 | なし | 申告時 |
| 企業版ふるさと納税 | 恒久寄り | 大 | 期中 |
| 法人成り(法人化) | 恒久 | 小 | 設立時 |
役員報酬を適切に設定する(社会保険料・所得税まで含めた最適化)
役員報酬は、定期同額給与など一定の要件を満たせば損金に算入できます。法人の利益を役員報酬で圧縮できますが、受け取る個人には所得税・住民税と社会保険料がかかるため、法人税の節税だけを見て高くしすぎると、個人側と社会保険料の負担が増えて逆効果になります。
最適化の考え方は、法人税・所得税・社会保険料を合算したトータルの負担が最も小さくなる金額に設定することです。期首から3か月以内に決め、期中の安易な増減額は損金不算入のリスクがあるため避けます。
決算賞与・事前確定届出給与を活用する
決算賞与は、従業員への賞与を決算月に未払計上して当期の損金にできます。事業年度末までに各人別の金額を通知し、翌期1か月以内に支給するなどの要件を満たす必要があります。役員に賞与を出して損金にしたい場合は、事前確定届出給与として事前に届け出ておく必要があります。
いずれも現金が実際に出ていく施策のため、資金繰りとセットで判断します。届出の期限や支給時期の要件を外すと損金にできない点が最大の注意点です。
30万円未満の少額減価償却資産の特例を使う
中小企業者等は、取得価額30万円未満の減価償却資産を、年間合計300万円を限度に、取得した事業年度に全額損金算入できます。本来なら数年かけて償却する資産を当期に一括で費用化できるため、利益が出た期の調整に向きます。
この特例は適用期限が設けられている時限措置です。最新の適用期限と要件は国税庁の案内で確認してから使ってください。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)に加入する
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、掛金を損金に算入できる制度です。取引先の倒産時に無担保・無保証で借入れができる備えにもなります。掛金は月額5,000円〜20万円の範囲で設定でき、総額800万円まで積み立てられます。
ただし解約時に受け取る解約手当金は益金になり、その期に課税されます。つまり本質は税の繰り延べであり、出口で利益が出る期に解約すると節税効果が打ち消されます。退職金支給などの損金が立つ期に合わせて解約するのが定石です。
法人向け保険を利用する
法人向けの生命保険は、契約内容によって保険料の一部または全部を損金にできます。ただし、解約返戻金がある保険は、解約時に返戻金が益金となり課税されるため、これも繰り延べの性格が強い施策です。
近年は保険料の損金算入ルールが見直され、解約返戻率に応じて損金にできる割合が制限されています。加入前に、出口(解約時期と受け取る益金の使い道)まで設計しておく必要があります。
オペレーティングリースを導入する
航空機や船舶などを対象とするオペレーティングリースは、出資した初期の数年で大きな損失を計上し、利益を圧縮する仕組みです。一時的に利益が大きく出た期の対策として使われます。
ただしリース終了時には売却益などで利益が戻り、その期に課税されます。これも繰り延べであり、戻ってくる利益を吸収できる損金(役員退職金など)を出口で用意できるかが成否を分けます。元本割れのリスクもあるため、効果額だけで判断しないことが重要です。
賃上げ促進税制・設備投資減税を活用する
賃上げ促進税制は、従業員への給与等支給額を前年度より増やした場合に、増加額の一定割合を法人税額から控除できる制度です。損金を増やすのではなく税額そのものを直接減らす「税額控除」のため、繰り延べではなく恒久的な節税になります。
中小企業投資促進税制などの設備投資減税も、対象設備を取得した場合に特別償却または税額控除を選べます。いずれも要件と適用期限が細かく定められているため、最新の内容を確認のうえ活用してください。
社宅制度を導入する
会社が住宅を借り上げて役員・従業員に社宅として貸すと、会社が支払う家賃を損金にできます。役員から一定額(賃貸料相当額)以上の家賃を徴収していれば、給与課税されずに済みます。徴収額が少なすぎると差額が給与とみなされ課税されるため、計算式に基づいた賃貸料相当額の設定が必要です。
旅費日当の支給を制度化する
出張旅費規程を整備し、実費とは別に日当を支給すると、その日当は会社の損金になり、受け取る個人側では原則として所得税の課税対象になりません。社会通念上妥当な金額の範囲で、規程に基づいて支給することが前提です。規程がないまま支給すると給与扱いになる点に注意します。
未払費用・短期前払費用を漏れなく計上する
決算日時点で債務が確定している費用は、まだ支払っていなくても未払費用として当期の損金にできます。給与の締め後分や社会保険料などが対象です。漏れなく拾うだけで利益を圧縮でき、現金流出はありません。
短期前払費用は、支払った日から1年以内に提供を受ける役務についての前払費用を、継続適用を条件に支払時の損金にできる特例です。家賃や保険料の年払いがこれに当たります。
本社家賃や費用を年払いにする
前述の短期前払費用の特例を使い、本社家賃やサーバー利用料などを月払いから年払いに切り替えると、決算前に1年分をまとめて損金にできます。ただし初年度は12か月分の現金が一度に出ていくため、資金繰りに余裕があるときに行います。一度年払いにしたら継続適用が条件である点も確認してください。
不要在庫を処分する
売れ残った在庫を廃棄・値引き販売すると、評価損や除却損を当期の損金にできます。実際に処分した事実と評価の根拠を記録に残すことが、税務調査での否認を防ぐ前提です。帳簿上だけで評価を下げる処理は認められにくいため、廃棄の証憑を残します。
交際費・社員旅行・健康診断を経費にする
中小法人は、交際費等のうち年800万円までを全額損金に算入できる特例があります。社員旅行や全社員対象の健康診断も、福利厚生費として要件を満たせば損金になります。社員旅行は参加割合や日数などの要件があり、特定の役員だけが対象だと給与扱いになる点に注意します。
自家用車を社用車にする
経営者が個人で所有する車を会社名義に切り替えて社用車にすると、減価償却費・ガソリン代・保険料・自動車税などを会社の損金にできます。事業での使用実態が前提で、私的利用分は経費にできません。走行記録などで事業使用を説明できるようにしておきます。
赤字の繰り越し・欠損金の繰戻し還付を活用する
当期が赤字(欠損金)になった場合、青色申告法人はその欠損金を一定期間繰り越し、将来の黒字と相殺できます。中小法人等は、欠損金の繰戻し還付を選び、前期に納めた法人税の還付を受けることもできます。赤字の期はこの2つが節税の中心です。
企業版ふるさと納税を活用する
企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)は、自治体の事業に寄附すると、寄附額の一定割合が法人税等から税額控除される制度です。損金算入と合わせて、実質的な負担を抑えながら社会貢献ができます。寄附先や手続き、適用期限に要件があるため、内閣府の案内で確認します。
個人事業主の法人化(法人成り)で節税する
個人事業の所得が大きくなると、累進課税の所得税より、法人税+役員報酬への給与所得控除を使った方が、トータルの税負担が下がる局面があります。役員報酬による所得分散や、退職金・社宅などの法人ならではの施策も使えるようになります。一方で社会保険の加入義務や法人住民税の均等割など固定費が増えるため、利益水準を見て判断します。
M&Aや組織再編を活用した節税の考え方
合併や会社分割などの組織再編、M&Aによる繰越欠損金の引継ぎは、一定の要件を満たせば税負担を軽減できる場合があります。ただし租税回避とみなされると否認される領域で、要件が極めて複雑です。実行前に、組織再編税制に精通した税理士・専門家の関与が前提になります。
DX投資促進税制やIT導入補助金との組み合わせ
設備投資減税と、IT導入補助金などの補助金・助成金は組み合わせて使えます。補助金は受け取った時に益金になる一方、対象設備の取得で特別償却や税額控除を受けられるため、両者を設計するとキャッシュと税負担の両面で有利になります。補助金には公募期間と要件があるため、投資計画と合わせて早めに確認してください。
施策別の節税効果シミュレーション(実際の金額・税率での試算例)
中小法人の実効税率をおおよそ30%と仮定し、「損金を100万円増やす施策」と「税額控除型の施策」で効果額がどう違うかを並べます。損金型は支出額×税率分だけ税金が減り、税額控除型は控除額がそのまま税金から引かれます。
| 施策タイプ | 支出・控除額 | 減る税金(効果額) | 現金流出(純額) |
|---|---|---|---|
| 損金100万円を計上 | 100万円 | 約30万円 | 約70万円 |
| 損金300万円を計上 | 300万円 | 約90万円 | 約210万円 |
| 税額控除30万円 | 控除30万円 | 30万円 | 0円(控除のみ) |
| 未払費用の計上 | 支出0円 | 計上額×30% | 0円 |
この表から分かるのは、現金が出ていかない未払費用や、税金から直接引ける税額控除型が「効率の良い節税」だということです。一方、損金型は税金が減る額より多くの現金が出ていくため、本来必要な支出に重ねて行うのが基本です。
- 国税庁「No.5759 法人税の税率」
- 国税庁「No.5500 申告と納税」
- 国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」
- 国税庁「No.5350 使用人賞与の損金算入時期」
- 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
- 中小機構「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」
- 中小企業庁「中小企業向け賃上げ促進税制」
- 国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
- 国税庁「No.5380 短期前払費用として損金算入ができる場合」
- 国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
- 国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
- 内閣府「企業版ふるさと納税ポータルサイト」
