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個人事業主の税金・節税

個人事業主の税金を徹底解説|所得税・住民税・個人事業税・国保の種類と節税対策

若月
若月
会社経営者 ・ 節税・補助金を実務で運用 ・ セーフティ共済・小規模企業共済を活用
2026-06-16
開業したばかりで「結局、自分はどんな税金をいくら払うのか」が見えず不安――そんな悩みにまず結論からお答えします。個人事業主が納める税金は、主に所得税・住民税・個人事業税・消費税の4つで、これに国民健康保険(国保)と国民年金の社会保険料が加わります。この記事では各税金の意味と計算方法、納付時期、確定申告の手順、そして青色申告や控除を使った合法的な節税策まで、順を追って整理します。読み終えたときには、自分の税負担のおおまかな見当がつき、申告準備の次の一歩が踏み出せる状態を目指します。
画像(準備中):個人事業主が税金の種類を整理している様子

個人事業主にかかる税金は主に4つ(結論先出し)

個人事業主が向き合う税金は、大きく分けて「所得税」「住民税」「個人事業税」「消費税」の4つです。所得税は1年間のもうけ(所得)にかかる国の税金、住民税は住んでいる自治体に納める地方税、個人事業税は一定の業種に対して都道府県が課す地方税、消費税は売上にかかる税金で一定規模を超えた事業者が納めます。

これらに加えて、税金そのものではありませんが負担として無視できないのが国民健康保険(国保)と国民年金です。会社員のように給与天引きされず、自分で計算・納付する必要があるため、まず「何があるか」を押さえることが資金繰りの第一歩になります。国税庁は、確定申告で所得税を計算し納める仕組みを公式に案内しています。

個人事業主が納める税金の種類一覧

まず全体像を一覧で確認します。それぞれ「誰に納めるか」「何にかかるか」が異なります。国税(国に納める)と地方税(都道府県・市区町村に納める)に分かれる点を押さえると整理しやすくなります。

個人事業主が納める主な税金・社会保険料の一覧
項目区分何にかかるか納め先
所得税・復興特別所得税国税1年間の所得(もうけ)国(税務署)
住民税地方税前年の所得市区町村・都道府県
個人事業税地方税一定業種の事業所得都道府県
消費税国税(一部地方)課税売上(一定規模以上)国(税務署)
固定資産税地方税土地・建物・償却資産市区町村
国民健康保険(国保)社会保険料前年の所得など市区町村
国民年金社会保険料定額(対象者)日本年金機構

このうち所得税・消費税は確定申告で自分が計算して納める「申告納税」、住民税・個人事業税・固定資産税・国保は申告内容や自治体の計算をもとに通知が届く「賦課課税」が基本です。つまり所得税の申告を正しく行えば、住民税などはそれを土台に自治体が計算してくれます。

所得税とは?仕組みと計算方法

所得税とは、1年間(1月1日〜12月31日)の所得に対してかかる国の税金です。ここでいう「所得」は売上そのものではなく、売上から必要経費を引いた「もうけ」を指します。さらに各種の所得控除を差し引いた「課税所得」に税率をかけて計算します。

所得税は課税所得が大きいほど税率が上がる「超過累進課税」で、国税庁が公表する税率は5%から45%までの7段階です。下の表は国税庁が示す所得税の速算表です。

所得税の速算表(課税される所得金額に対する税率・控除額)
出典:国税庁「所得税の税率」
課税される所得金額税率控除額
1,000円〜194万9,000円5%0円
195万円〜329万9,000円10%9万7,500円
330万円〜694万9,000円20%42万7,500円
695万円〜899万9,000円23%63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万円〜3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円以上45%479万6,000円

所得税額の計算方法と計算例

所得税の計算は次の流れで進みます。①売上−必要経費=事業所得、②事業所得−所得控除=課税所得、③課税所得×税率−控除額=所得税額。前述の速算表の控除額は、累進構造を1回の式で計算できるようにするための調整額です。

具体例で見ます。売上600万円、必要経費200万円、所得控除合計が基礎控除や社会保険料控除などで150万円だったとします。事業所得は400万円、課税所得は250万円です。速算表で250万円は「195万円〜329万9,000円」の10%区分なので、250万円×10%−9万7,500円=15万2,500円が所得税額の目安になります(実際にはこのあと復興特別所得税が加わります)。

青色申告特別控除を使えば、この所得控除前の段階で最大65万円を差し引けます。同じ売上・経費でも申告方法によって課税所得が変わるため、節税では申告区分の選択が大きく効きます。

復興特別所得税とは?

復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源にあてるための国税で、国税庁によれば2013年から2037年まで、その年の所得税額の2.1%を所得税とあわせて納める仕組みです。

先ほどの所得税額15万2,500円の例なら、復興特別所得税は15万2,500円×2.1%=約3,202円。所得税と合わせて約15万5,700円(100円未満切り捨て)を納める計算になります。確定申告書では所得税と一体で計算するため、別々に納付手続きをする必要はありません。

住民税とは?納付時期と納付方法

住民税とは、住んでいる都道府県と市区町村に納める地方税で、行政サービスの費用をまかなうために使われます。前年の所得に対して課される点が特徴で、所得に応じた「所得割」と、所得にかかわらず定額の「均等割」で構成されます。

個人事業主の場合、確定申告をすれば住民税の申告は原則不要で、申告データをもとに市区町村が税額を計算します。納付は通常6月に納税通知書が届き、一括または年4回(6月・8月・10月・翌年1月)の分割で納めます。所得割の標準税率は道府県民税と市町村民税を合わせて10%が一般的です。

個人事業税とは?対象業種と税率

個人事業税とは、一定の業種を営む個人事業主に都道府県が課す地方税です。法律で定められた業種(法定業種)に該当する場合にかかり、業種によって税率が3%・4%・5%に分かれます。多くの業種は5%です。

大きなポイントは、年間290万円の事業主控除があることです。つまり事業所得から290万円を差し引いた残りに税率をかけるため、所得が290万円以下なら個人事業税はかかりません。納付は8月ごろに都道府県から通知が届き、8月と11月の年2回に分けて納めるのが一般的です。

自分の業種が課税対象か、税率が何%かは都道府県税事務所が判断します。たとえば東京都主税局は法定業種と税率を公開しています。

消費税とは?課税事業者と免税事業者の違い

消費税とは、商品の販売やサービスの提供にかかる税金で、事業者が受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて国に納めます。すべての個人事業主が納めるわけではなく、「課税事業者」と「免税事業者」に分かれます。

国税庁の基準では、基準期間(個人事業主は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります。1,000万円以下なら原則として消費税の納税義務が免除される免税事業者です。ただし後述するインボイス制度により、売上規模にかかわらず課税事業者を選ぶケースが増えています。

消費税の計算方法とインボイス制度への対応

消費税の計算方法には、原則の「一般課税(本則課税)」と、売上にかかる消費税に業種別のみなし仕入率をかけて計算する「簡易課税」があります。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択でき、仕入れの計算が簡単になる利点があります。

2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、取引先が仕入税額控除を受けるために、登録事業者が発行する適格請求書(インボイス)が必要になります。これまで免税事業者だった人も、取引先との関係で課税事業者になり登録するか、免税のままでいくかの判断を迫られています。

負担を緩和するため、国税庁はインボイス登録した小規模事業者向けに、納める消費税を売上税額の2割にできる「2割特例」を案内しています。課税事業者を選ぶ前に、取引先が課税事業者かどうか、2割特例や簡易課税が使えるかを確認することが判断の軸になります。

固定資産税・その他かかる税金

固定資産税は、土地・建物・事業用の機械や備品(償却資産)を所有している場合に、その所在地の市区町村に納める地方税です。標準税率は固定資産の評価額に対して1.4%で、1月1日時点の所有者に課されます。事業用に使う資産は、確定申告とは別に償却資産の申告が必要になる場合があります。

このほか、店舗や事務所を借りている場合の不動産関連の税、車両を持つ場合の自動車税など、事業の形態によってかかる税金が加わります。自分の事業に固定資産税が関係するかは、市区町村の資産税担当に確認すると確実です。

国保(国民健康保険)とは?国民年金と税金の関係

国保(国民健康保険)とは、会社の健康保険に入らない個人事業主などが加入する公的医療保険です。保険料は前年の所得や世帯の人数をもとに市区町村が計算し、自治体ごとに金額が異なります。会社員と違って事業主負担(会社が半分払う仕組み)がないため、全額を自分で負担します。

国民年金は、20歳以上60歳未満の人が加入する公的年金で、日本年金機構によると2024年度の保険料は月額1万6,980円です。国保も国民年金も税金そのものではありませんが、支払った保険料は所得税・住民税の計算で「社会保険料控除」として全額を所得から差し引けるため、税金とも密接に関係します。

それぞれの税金を「いつ・どこで・どうやって」納めるか一覧

納付時期を見落とすと資金不足や延滞につながります。主な税金・保険料の納付時期と方法を一覧にまとめました。納付方法は、現金・口座振替のほか、e-Taxやスマホアプリ納付、クレジットカード納付など選択肢が広がっています。

主な税金・保険料の納付時期と納付方法
項目主な納付時期納付方法の例
所得税・復興特別所得税原則3月15日まで(確定申告と同時)口座振替・e-Tax・現金・クレカ納付
消費税原則3月31日まで口座振替・e-Tax・現金・クレカ納付
住民税6月・8月・10月・翌1月の年4回納付書・口座振替・電子納付
個人事業税8月・11月の年2回納付書・口座振替・電子納付
固定資産税自治体指定の年4回納付書・口座振替・電子納付
国民健康保険自治体指定(年8〜10回など)納付書・口座振替
国民年金毎月(前納も可)口座振替・納付書・クレカ

所得税は口座振替を選ぶと、引き落としが4月中旬ごろまで猶予されるため、資金繰りに余裕を持たせやすくなります。

確定申告の具体的な手順と申告期限・納付スケジュール

確定申告は、1年間の所得と税額を自分で計算して税務署に申告する手続きです。国税庁によると、所得税の申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までです。

手順は大きく4ステップです。①1年分の売上・経費の帳簿と領収書を整理する、②確定申告書と決算書(青色申告決算書または収支内訳書)を作成する、③税務署へ提出する(e-Tax・郵送・窓口)、④算出した税額を納付する。国税庁の確定申告書等作成コーナーやe-Taxを使えば、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が作れます。

全体の年間スケジュールとしては、2〜3月に所得税の申告と納付、3月末に消費税、6月以降に住民税・国保、8月以降に個人事業税の通知が届く流れになります。納税資金は確定申告で税額が見えた時点で確保しておくと安心です。

開業届・青色申告承認申請書の提出方法と提出期限

事業を始めたら、まず税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。国税庁によると、開業届は事業開始の日から1か月以内に提出することとされています。

青色申告で節税したい場合は「所得税の青色申告承認申請書」もあわせて提出します。提出期限は、原則としてその年の3月15日まで、または事業開始から2か月以内です。この申請を出さないと自動的に白色申告となり、最大65万円の青色申告特別控除が使えません。開業届と青色申告承認申請書は同時に提出するのが効率的です。

白色申告と青色申告の違いとメリット・デメリット比較

申告には白色申告と青色申告があり、節税効果が大きく異なります。青色申告は事前申請と複式簿記が必要な代わりに、最大65万円の特別控除や赤字の繰越など多くの優遇があります。違いを表で整理します。

白色申告と青色申告の比較
項目白色申告青色申告
事前申請不要必要(承認申請書)
帳簿簡易な記帳複式簿記(65万円控除の場合)
特別控除なし最大65万円(e-Tax等の要件あり)
赤字の繰越不可翌年以降3年間繰越可
専従者給与上限あり適正額を全額経費にできる
手間少ないやや多い

国税庁は、青色申告特別控除65万円の適用にはe-Taxによる申告または電子帳簿保存が要件になると案内しています。手間はかかりますが、会計ソフトを使えば複式簿記のハードルは大きく下がるため、節税効果を考えると青色申告を選ぶ価値は高いです。

税金を滞納するとどうなる?延滞税・加算税のリスク

納付期限を過ぎると、本来の税額に加えてペナルティが課されます。代表的なのが延滞税(納付の遅れに対する利息的な税)と加算税(申告の誤りや無申告に対する罰則的な税)です。

国税庁によると、延滞税は納期限の翌日から課され、納期限から2か月以内とそれ以降で割合が変わります(年ごとに見直される特例基準割合に連動)。さらに、期限内に申告しなかった場合は無申告加算税、過少に申告した場合は過少申告加算税、意図的な隠ぺいには重加算税が加わります。

節税(合法的に税を減らす)と脱税(違法に税を逃れる)の線引きを誤ると、重い加算税の対象になります。控除や経費の根拠を残し、不安なときは税務署や税理士に確認してから申告することがリスク回避につながります。

個人事業主の節税対策の基本

節税の基本は「経費を漏れなく計上する」「使える控除をすべて使う」「青色申告を選ぶ」の3つです。所得税も住民税も、課税所得が小さくなれば連動して下がるため、課税所得を正しく圧縮することが効果的です。

前述の青色申告特別控除(最大65万円)は、その代表例です。たとえば所得税率10%・住民税10%の人なら、65万円の控除で合計約13万円の税負担が変わる計算になります。次の項目から、具体的な節税策を順に見ていきます。

経費を漏れなく計上する

必要経費とは、売上を得るために直接かかった費用です。仕入れや外注費だけでなく、通信費、交通費、消耗品費、家賃や光熱費の事業使用分(家事按分)など、漏れなく計上することで課税所得を下げられます。

自宅兼事務所の場合、家賃や電気代のうち事業で使った割合を合理的な基準(使用面積や使用時間)で按分して経費にできます。按分の根拠を説明できるようにしておくことが、後の税務調査でのリスク回避になります。領収書やレシートは原則7年間の保存が求められます。

経費にできる支出・経費にできる税金を把握する

見落としやすいのが「経費にできる税金」です。事業に関連する税金の一部は、必要経費として所得から差し引けます。一方で、所得税・住民税のように経費にできない税金もあるため、区別が重要です。

経費にできる税金・できない税金の例
税金経費計上
個人事業税できる
固定資産税(事業用分)できる
自動車税(事業用分)できる
印紙税できる
消費税(税込経理の場合)できる
所得税できない
住民税できない

個人事業税や事業用資産の固定資産税は経費になりますが、所得税・住民税は経費になりません。この区別を知っておくだけで、申告時の計上漏れを防げます。

短期前払費用の特例・減価償却の特例を活用する

短期前払費用の特例は、家賃や保険料など継続的なサービスの料金を1年分前払いした場合に、支払った年の経費にできる仕組みです。本来は期間に応じて分けて計上するところを、支払時に全額計上できるため、利益が大きく出た年の節税に使えます。

減価償却は、高額な資産を耐用年数で分けて経費にする仕組みですが、青色申告者には「少額減価償却資産の特例」があります。国税庁によると、取得価額30万円未満の資産を、年間合計300万円までその年に一括で経費計上できます。パソコンや備品をまとめて購入した年の節税に有効です。

所得控除と税額控除の内容を把握する

控除には、所得から差し引く「所得控除」と、計算した税額から直接差し引く「税額控除」があります。税額控除のほうが税金を1円単位でそのまま減らせるため効果が大きい仕組みです。

所得控除には基礎控除、社会保険料控除(国保・国民年金が対象)、生命保険料控除、配偶者控除、扶養控除などがあります。国税庁によると基礎控除は合計所得金額に応じた金額が差し引けます。税額控除には住宅ローン控除や寄附金特別控除などがあります。自分が使える控除を一つずつ確認し、申告書に反映することが節税の土台です。

医療費控除・ふるさと納税を活用する

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額(原則10万円、または所得の5%)を超えた場合に、その超えた分を所得から差し引ける所得控除です。家族分も合算でき、領収書を整理しておけば確定申告で申請できます。

若月

若月

会社経営者 ・ 節税・補助金を実務で運用 ・ セーフティ共済・小規模企業共済を活用
実在の経営者(匿名化)。実務でやった節税・補助金の話を、建前でなく本音で書く。「税理士が積極的に教えてくれないこと」も率直に。

中小企業の経営者。自分の会社で節税と補助金を実践してきた。税理士に任せきりにせず、制度を自分で調べて使う派。失敗や払いすぎた経験もあるからこそ、現実的な打ち手を語れる。